私の息子は自閉症、知的障がい、そして天使

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喫茶店のランチ

私、カフェのランチというものに大変魅力を感じます。

まず、響きのいい言葉です。

 

今日、娘と一緒に喫茶店でランチをしました。

スターバックスなどのコーヒーショップに入ることはあっても、いわゆる喫茶店に入ったのは久しぶりのことで、娘とふたりでランチするのも久しぶりのこと。

 

この喫茶店には思い出があります。

いつもいくスーパーの近くにあり、いつも見ている喫茶店ですが、もう何年も入ったことがありませんでした。

最初に入ったのは、2010年の2月でした。

私たちがアメリカから日本に来たばかりの頃で、親子三人で実家に居候していました。

私がまだ抗がん剤治療を受けていた頃で、息子を療育センターに通わせ始めたころだったと思います。

 

その日は高校の同級生のあけちゃんと喫茶店で待ち合わせていました。娘はまだ保育園に空きがなく私が連れ歩いていました。

朝、息子を見送った後、雨が降る中、娘を連れて歩いたため、ズボンのすそはびしょびしょでした。

近くのスーパー2階にある衣料品店で娘のズボンを買い、急いで着替えさせて喫茶店に行きました。

あけちゃんはいました。

抗がん剤のせいで、指先が敏感で痛くて、冷たい物を飲食すると口の中が痛くて、寒い冬の雨は身に応えました。

あけちゃんと私はあったかいコーヒーを、娘はアップルジュースを頼みました。

モーニングサービスが3つ運ばれてきました。

厚切りトーストとゆで卵。

当時ゆで卵の白身が好きだった娘は大喜び。

「わーい、たまにょ(たまご)」とゆで卵に喜ぶ娘。

そうです、あの頃の私たちはビンボーでした。

実家に居候していたので住むところはありましたが、まさに居候でしたので、何も持っていませんでした。

食事も実家で食べさせてもらっていたので、アメリカにいたころのように好きなものばかりを自由にすることもできませんでした。

 

「ママのも食べていいよ」というと、

「白いのたまにょ(白い卵)たべゆ」と喜ぶ娘。

 

すると、そばの席にいた老婦人が「これもお食べなさい。私は卵はいらないから、お嬢ちゃんあげるね」と、ゆで卵をほいっと娘のお皿にのせてくれました。

私が遠慮したものの、その老婦人は「いいの、いいの。私は食べないから」と言うばかり。

娘はいただいたゆで卵をトントンとテーブルにぶつけていました。

 

あけちゃんと私は他愛もないおしゃべりをしました。

私は日本での生活もよくわからず、どこでなにを買えるのかをきいたりしました。

車も持っていませんでした。お金もそんなにありませんでした。

生きていることだけで必死でした。

 

今日、娘と喫茶店に入ると、店中は一組のお客さんがいるだけでガランとしていました。

私たちがあのとき座った席はそのままで、その横の席にお客さんがいました。

反対側に座ると、私たちはメニューをみました。

 

ボロネーゼとオレンジジュース、オムライスとオレンジジュース。

 

モーニングは今も変わらず「トーストとゆで卵」となっていました。

娘にあのときの話をすると、娘は笑って言いました。

「私って、そのとき一体いくつの卵の白身食べたの?」

 

自分の、ママの、あけちゃんの、老婦人の。。。4つかな。

 

「ママ、3歳の子に4つも卵食べさせたらだめだよ」

 

そうでした。

あのときの娘は今は私より大きくなっていました。